奇妙な共同生活
ピンポーン。
夜遅くに家のチャイムが鳴る。
ドアを開けると、
派遣社員のハマーンが立っている。
「お~オノ~。わりぃが泊めてくれ」
「はぁ?」
どうやら競艇狂いのハマーンは、
家賃を滞納しすぎて
大家から追い出されたという噂は
本当だったらしい。
居候する場所を探していると聞いていたが・・・
でもどうやって俺んちが分かったんだ?
「店長に聞いたよぉ~」
なにぃぃぃ?
店長め・・・
俺に面倒ごとをなすりつけたな・・・。
「いや、うちはちょっとムリです」
「え~~頼むよ~」
なんで俺がこんな図体のデカいオッサンを
うちに泊めなきゃならねんだ。
「いや、俺んち狭いですし・・・」
「大丈夫だよ~~・・・」
大丈夫じゃない。そんな巨体が入ったら、
六畳一間が一瞬で埋まってしまうだろうが。
絶対嫌だ。いつまで居られるかわかんないし。
こんなオッサンと一緒に寝るなんて
たまったもんじゃない。
そんな悲しそうな顔してもダメ!
自業自得なんだから!
「お願いだよぉ~2,3日でいいから。」
「いや、俺んち狭いですし・・・」
しつこいな・・・早く帰ってくれよ。
「じゃぁ、今度女の子紹介するからさ」
「はぁ?」
ハマーンがおもむろにスマホを開き、
写真を見せてくる。
どうせ、ガールズバーの女だろ。
「えええ?!」
ハマーンに寄り添って
ピースしている若い女性。
とてつもなくかわいい・・・
石原さとみ似の美女だ。
「前の職場の子。25歳よ。
彼氏いないし。オノに丁度いいでしょ」
「・・・いや、そんなんいいすから。」
と言いつつも写真の美女を
まじまじと見つめる俺。
前の職場?なんでこんな美女が
ハマーンと・・・?
確かにハマーンはどこか
マスコット的なキャラクターでもあり、
女子からは意外と人気があったりもするが・・・。
「ちょっと!」
俺が写真に気を取られている隙に、
ハマーンはいつのまにか家の敷居を跨いでいる。
「いいでしょ。2、3日だけ!
ゼッタイ紹介するからぁ~」
「いや、そんなんいいですから!」
ズンズンと迫ってくるハマーンの巨体を
押し返そうとするが、もはや止められない。
というか、どこか美女を
あわよくば紹介してもらえる
という思いがよぎって、腕に力が入らない。
「かわいいよ!巨乳だよ!」
「もぉ~紹介とかいいですから~」
そう言いながらも、
結局ハマーンを家に引き入れてしまう俺。
しょうがない。
こうなったら2,3日の我慢だ。
「もうっ!・・・
ゼッタイ紹介してくださいよ!!」
「はいよ~」
かくして、年明け早々、
俺とハマーンの
奇妙な共同生活が始まった。