ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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謝罪に行きました

俺は、昼前ごろ、
池袋のデパートで買った
お詫びの菓子折りを持って、
“すずたん“から
教えてもらったタツさんの家へ出発した。

菓子折りは、“すずたん“から聞いた、
タツさんの大好物のベルギーワッフル。
でも、あんな強面で、ワッフル好きとは・・・

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タツさんの家は、
予想以上に近くてビックリだ。
俺の家の前の通りから、
3,4本行ったところにあるらしい。

タツさんに、自分のとった
失礼な態度を謝りたい・・・
そうしないと俺は前にすすめない・・・
ような気がする。

20分ほど歩いたところで、
タツさんの家に到着。
見た感じ、どこにでもある
普通の一軒家という感じだが、
ガレージに停めてある
タツさんの愛車であろう
黒のセダンが、ピカピカに磨かれていて
存在感をはなっている。

「ここがタツさんち・・・」

怒ってるかなぁ、
怒ってるよな・・・そりゃぁ・・・
あぁ、なんて言われるんだろ・・・?

とにかく!!何を言われても
平常心を心がけよう。
よしっ・・・
俺は、気合を入れてインターホンを押す。

ピンポーン。
返事がない。
・・・あれ?もしかして、いない?
情けないことに、一瞬
留守であることを願う俺がいる。
10秒ほど経った後、インターホン越しに
低い声で「はい、ちょっと待って」と
声が聞こえる。
ドキドキする・・・

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ガチャ。

現れた上下白ジャージ姿のタツさん。

「あ、あの・・・こんにちは・・・」

「・・・あ、そうきたか~!」

タツさんは、俺の顔を見るなり、
自分のおでこをポンと叩く。

「何?スズキさんから聞いたの?うち」

「はい・・・」

「あんのっ、ジジイめ・・・」

タツさんは、1人でブツブツ言っている・・・

「あの、この前、失礼なことを言って・・・
 突然帰ったことを、一言、謝りたくて・・・」

「あ~、うん」

タツさんは、意外に笑顔だ。
これはいける、かもしれない。

「でも、そんなことしてもムダだよ」

「え?」

「別に謝らなくてもいいしね。
 君がどうなろうと
 俺には、知ったこっちゃないから」

うわ・・・笑顔で、
キツイ事を言われると
逆に怖い・・・
平常心だ・・・平常心・・・

「はい・・・」

「もう、こっちだって別に、
 君と会いたくないよ」

「はい・・・」

平常心・・・平常心・・・

「あのね。さっきから、
 はいはい・・・って。

 はっきり言って、今の君には
 何の魅力もないんだよね」

「な・・・」

にをっ!

ヤバイっ!!・・・キレ・・・
ちゃだめだ!!!!
キレたことを謝りに来たのに、
またキレそうになってる・・・

俺って、いっつもこうだ~
何か言われると、すぐムッとして、
言い返したくなってしまう・・・
そういうとこだよな・・・
でも、もう、ここは勢いしかない!!!

「す、すみませんでした!!!!」

俺は、直角に勢いよくお辞儀をする。

「そうやってさ、謝って、
 自分が許されたかっただけ
 なんじゃないの?」

「え・・・」

確かに、この人の言う事も、
ごもっともかもしれない・・・

俺が黙っていると、
タツさんは、アゴをクイクイっと動かす。

「それ」

「え?」

「そ・れ!」

「ん?」

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そういえば、さっきから、
タツさんの目線が
チラチラと俺の持っている
ワッフルの方に向いている。

「これ・・・ですか?」

「そう。せっかく持ってきたんだから
 置いていきなよ」

「あっ!すみません」

俺は、慌てて
持っていたベルギーワッフルを手渡す。
ワッフルの箱を見るなり、ニヤッとするタツさん。

「おっ!俺の好物知ってんだ~?
 さては・・・
 あのジジイから聞いたな?」

「あ・・・はい」

「うん、ま、じゃぁ、そういうことで」

そう言いながら、タツさんは
ゆっくりとドアを閉める。

フゥ~。
結局、許してはもらえなかったけど
なんとか謝れた・・・

でも、なんだかんだ言って・・・
タツさん、ワッフルが
食べたかっただけなんじゃ・・・

でも、良かった。
“すずたん”に、タツさんの好物聞いといて・・・