ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

    f:id:peraichikun:20190105020429j:plain f:id:peraichikun:20190105020439j:plain

ビギナーズラック

 

「まもなく東京競馬場第7レースの投票を
 締め切ります」

競馬の重賞レース、GⅢの開催日は
馬券場内のアナウンスの声が外まで漏れている。

水道橋と後楽園周辺と言えば、
行き先はだいたい東京ドーム。
ただ、東京ドームのすぐ横に
JRAの場外馬券場があるため、
よく競馬新聞を持ったオッチャンたちが
駅から馬券場めがけて歩いている。


f:id:peraichikun:20180903233956j:plain

バイト先に着くと、ここでも大学生たちが
競馬の話で盛り上がっていた。
競馬をすることは、後楽園周辺で
働く者の宿命なのかもしれない。

「オノさ~ん、馬券の買い方教えてくださいよ~」 
競馬をやったことがないという
大学生トミーが言った。
「しょうがねぇな・・・」
トミーは、少し小太りの大学2年生。
俺がこのバイトに入った当初から、
事あるごとに、人懐っこく寄ってきて、
俺もいい兄貴分のような気分になっていた。

正直、競馬なんて
俺もほとんどやったことはないが
高校生の時にゲーセンで競馬ゲームに
ハマっていた時期がある。

俺は当時の記憶を呼び覚ましながら教える。

f:id:peraichikun:20180903234114j:plain

「競馬って、ほとんどのレースが
 人気の馬が勝つようになってんだよ」
「へぇ~」
「今回は人気が割れていて、上位人気5頭の
 馬のオッズ、配当金がある程度高い。
 俺の経験上、だいたい人気馬が勝つんだよな」
「ふんふん」
「要するに、上位1~5番人気の馬に
 万遍なく賭ければ、お金が戻ってくるか、
 もしくはそれ以上のバックがあるわけよ」

「じゃあ、俺は、この7番人気の馬にします!」

え? 7番? おいおい、話聞いてたのかよ。
俺は1~5番人気の馬が来るって
説明してたんだけど・・・。

「7番人気って縁起良さそうじゃないすか~」
は? いやいや、この馬はさすがにキツイって。
そういう縁起とかで賭けちゃうヤツが、一番負けるんだよ。

「えっ、ほんとにそれでいいの?」
「いいっす。この馬で!」
まぁ、初めてだし、感覚とかも分かんないんだろうけど・・・。
「最初だし、おまえの好きなようにしなよ。」
「うっす!」
しょうがねぇなぁ。まぁ、トミーの負け分は
俺の勝ち分から補填してやるか・・・。

俺は1番人気から6番人気の馬に、
それぞれ500円ずつの単勝(計3000円)
と手広く賭ける。
よし。人気馬6頭全頭が大コケしない限り、
間違いなくこのレースは当たる。

そして、レースが始まり・・・。

予想に反し、1・2番人気がスタートで
大きく出遅れ、ヒヤッとするが
3番人気が先頭をひた走る。
まずまずの展開・・・。
しかし、最後の直線でトミーの買った
7番人気が外から差しこんで、まさかの1着。

f:id:peraichikun:20180829213539j:plain

 

「ヤッター!!! 当たりました!オノさん!」
「そうだね・・・」
「俺、換金してきまーす!」
「あ、あぁ。換金所は機械に
 馬券を入れれば大丈夫だから・・・」
「うっすー!」

7番人気とあって、トミーの500円は・・・
1万円に化けた。
これぞビギナーズラックか・・・。
っていうか、偉そうに競馬を語ってた
俺の立場っていったい・・・。

すると、換金から戻ってきたトミーが
缶コーヒーを差し出してきた。
「オノさん、あざーす!」
「いや、俺は何も・・・」

10コも下の大学生の前で
いいトコ無しなばかりか、
缶コーヒーまでご馳走になるとは・・・。

 

f:id:peraichikun:20180903234527j:plain

トホホ・・・。



俺の将来性

俺がまだ県内有数の進学校に通う高校生の頃
文化祭で知り合った学外の女の子に告白された。

その子は、そこまでブスというわけでもなく、
女子高に通う普通の女の子だった。
正直タイプではなかったので、断り続けていた。

「俺のどこがいいん?」
「う~ん、全部好き」
「いや~」
「それに、オノくんって、
 なんか将来性があると思うの」
「はぁ・・・。だけど、う~ん・・・、ゴメン」

f:id:peraichikun:20180823232221j:plain

 

それからもしつこくメールが来ていたが、
無視し続けていると連絡は無くなった。
そして大学受験を経て、
俺は横浜国大に合格し、上京した。
上京してしばらくすると、
アドレスも変えていたはずなのに、
どこから聞き出したのか
その女の子から、またメールが来た。
その子も東京の大学に進学したらしく、
仕方なく、また会うことになった。

「今、付き合ってる人いますか?」
「いるよ」
ホントはいないが、あまりにしつこいので
ウソをついた。
「そうなんだ・・・」
「だから、もう連絡せんでくれん?」
「・・・」

それから大学を卒業し、
友達が大手企業に就職する中
俺は何を勘違いしたか役者を目指し、
知り合いの劇団の舞台に出るようになった。
しかし、そんな簡単に芽が出るはずもなく、
アルバイトで生計をたてる毎日。
そんなある時、SNSにメッセージが届いた。
あの女の子からだ。

「まだあなたのことが忘れられません。
 今どこで働いてますか?」
ほんっと、しつこいなぁ!
どんだけ俺のこと好きなの?
でもまぁ・・・、
チケットノルマもあるし、丁度いいや。

「お~久しぶり! 俺、実は今、
 役者やってるんだ。
 今度舞台があるから観に来てよ」

f:id:peraichikun:20180823232228j:plain

 

舞台と言っても小さな劇場。
しかも俺のセリフも一言二言で、端役も端役。
けど、この際、
観に来てくれるんなら誰でもいい。
会場の場所と日時をメールで送り付ける。
ラッキー。これでチケット1枚売れた。

しかし、それ以来、待てども待てども
女の子からの連絡は来なかった。

将来性かあ・・・。
役者の俺は、もう用無しかい! 

f:id:peraichikun:20180823232236j:plain

 

家に帰りたくない

 

店長が、ふいに
「オノくんは結婚とかしないの?」
と聞いてきた。
そんな予定はないと答えると、
「しないほうがいいよ・・・」
としみじみと言ってきた。

店長には娘が二人いるが、
上の娘の高校受験で、家庭内が、
特に奥さんがピリピリしているらしい。
疲れて帰って来て、家でお酒でも
飲もうものなら、何を言われるか分からないそうだ。

「あいつは、ほんとアホだから。
 娘がいなかったら100%離婚してたね。」

今は下の娘が成人するまで我慢しているが、
あと6年経ったら、絶対離婚するとまで断言する。
しまいには、つらつらと奥さんの悪口を話し出した。

「もう、あいつ早く死んでほしい。
 でも、後腐れない交通事故が一番楽でいいな」


f:id:peraichikun:20180829213028j:plain


うわ〜、そこまで言うか。
結婚しても、こうなったらおしまいだな・・・。

 

ラストオーダーが終わり、いよいよ
店の片づけが始まると、
「ねぇ、飲みにいかない?」
と大学生たちに声をかけ始める。

しかし、大学生たちは、テストなのか、
色々予定があるのか、
店長のいつものが始まったよ・・・
という感じで、とにかく反応が悪い。

「おまえは付き合ってくれるよな?」
店長はよっぽど家に帰りたくないのか、
今度は個別にバイトたちを誘い出す。

「おれはここにいる時が一番幸せだ。
 みんなとできるだけ長く一緒にいたい!
 そうだ! 今日は24時間営業にするか!」

 

f:id:peraichikun:20180828012933j:plain


そんな店長を尻目に、
バイトたちは黙々と作業をし続けていた。



トンッ…トンッ…トンッ…

『そういえば、昨日さ・・・。
 バイトから帰って気づいたら、
 ベッドにうつ伏せで寝ちゃってて。
 しかも電気つけっぱなしで。そしたら、

 コンコン

 玄関のドアをノックする音がするのよ。
 朝4時よ?
 誰だろう? こんな時間に? 
 って思ってたら・・・。

 ドンドンドン!

 ドアをノックする音がいきなり大きくなる。
 ビビるじゃん!
 いやだなぁ~こわいなぁ~って思ってたら、

 ガチャ。

 カギ閉めたはずなのに! 
 ピッキングか!?  泥棒だ! って
 起き上がろうとするんだけど、
 体がピクリとも動かない。

 トンッ・・・トンッ・・・トンッ


 え? 泥棒が入ってくる! 
 誰? マジで? やばい、起きないと。
 起き上がろうとするんだけど、
 ぜっんぜん体が動かないの。

 思いっきり力を入れようとするんだけど、
 首すら動かない。
 重い!!
 誰かが頭の上に乗っているように重くて・・・。

 そしたら、俺の頭の上から声がするんだよ。
 めっちゃ怖くて!! 
 金縛りなんて
 遭ったことなかったからさ!!!』

 

f:id:peraichikun:20180903012722j:plain


っていう話を、
バイト先の大学生におどろおどろしく話したら、

「それは、体は活動休止してるのに、
 脳が活発に活動してるだけですね」


と、丁寧に金縛りのメカニズムを説明された。

・・・分かってるよ!
金縛りのメカニズムは!!
俺に霊感なんて1ミリもないのも十分知ってるよ!

でも、なんか霊のしわざだって思いたいの!

なんか霊感っていうものに
ちょっとした憧れがあるの!!



実際見えたら、すげーイヤだけど・・・。



恋の始まり!?

店長から面接で言われた通り、
周りのスタッフは、自分よりも一回りも
年下の18、19歳の大学生ばかり。
男は若すぎて話も合わないし、
ましてや女の子たちは年が離れすぎていて
恋愛対象には見れない。

しかし、いつものように出勤すると、
見慣れない一人の女性が忙しく
動き回っている。
キッチンに女の子?

「あ、新しく入ったオノです」
「あぁ、ハラダです。宜しくお願いします」

ん? よく見たらめちゃ可愛い!!!
しかも、年は20代後半のフリーターだという。
若すぎなくて、ちょうどいい!!

「私、女優目指してて・・・。
 あきらめちゃったんですけど」
「あ、俺も役者目指してたんですよ~。
 あきらめちゃったんですけど」
「えーー? じゃぁ、同じですね~」
「そうですね~、ははは」

え? なに? もしかしてこの子と、イイ感じ? 
なんか、そういう感じに発展しちゃうとか
あるんじゃないのぉ?
ぅひょ~~、毎日イチャイチャしたりして・・・。

f:id:peraichikun:20180828004008j:plain

あらぬ妄想が膨らむ。
「じゃぁ、このバケツに氷入れて来てくれます?」
優しく丁寧に教えてくれる姿は、まさに女神。
このバイト、最高かもしれない。


幸せな一日が終わり、挨拶をする。
ハラダさん、明日からも、よろしくお願いします!」
「あ、私、今日で最後なんです。
 今度結婚することになって」


え!? 最後?? 結婚??? 



f:id:peraichikun:20180828004053j:plain


・・・え゛ーーーっ!!




俺のイチャイチャラブラブバイト生活は、
あっけなく終わりを迎えた。

何で勝てない、巨人!?

f:id:peraichikun:20180828011443j:plain

 

先日の東京ドームは、巨人対広島戦。
東京ドームは巨人の本拠地。
お店は、ほとんど巨人ファン。

「今日は(巨人が)勝つよ!」

カウンターに座った巨人のユニフォームを
着たおじさんが話しかけてきた。
「そうですね~! 楽勝っすよ!」

広島出身の俺はバリバリのカープファン。
巨人のホームである
東京ドーム近くの居酒屋に、
まさかカープファンが働いているとは
思えないのか、俺を当然巨人ファンだと思って
話しかけてくるので、俺は話を合わせる。

なぜなら今のカープは強すぎるからだ。
昔の最弱カープの時代なら、
他球団のファンの前でも、カープファンを
名乗れば、同情されるだけだった。

しかし、今のカープは若手が育ち、
セ・リーグを連覇するなど、憎たらしいほど
強く、今シーズンも首位を独走している。

「今日はカープ戦だから鯉食べとこうかな?」
鯉はカープのシンボル。
それを食べて、縁起をかつごうというのだ。
「あはは。鯉なんて
 不味くて食べられませんよ」
「そりゃそうだ!」
おじさんは、みるみる上機嫌になって
お酒の注文も進む。

 

試合が始まるころには、
おじさんの顔は真っ赤になっていた。
「お、そろそろ始まるな。
 じゃあ、巨人が勝ったらまたくるわ~」
え・・・。おじさん、悪いけどそれはナイナイ。
「お! じゃぁ、またのちほど! 応援してます!」
ガッツポーズでおじさんを送り出す。

ふぅ、やれやれ、やっと帰ったか。
ファンじゃないのに、
巨人を持ち上げるのも疲れるぜ・・・。
ま、巨人ファンのフリをするのなんて、
楽勝楽勝♪

f:id:peraichikun:20180828011800j:plain

試合中は、客足も減るので、休憩タイム。
スマホの速報ニュースで試合の経過を見る。
お、よーし! やった! カープ勝ってるな。
結果、やはりカープの強さはハンパなく、
大量得点で巨人を打ちのめした。

あまりの大差に試合終了を待たずに諦めた
巨人ファンたちが、ぞろぞろ東京ドームの方
から流れてくる。
そして、そのまま駅の方へ・・・。
やはり巨人が勝った日と、負けた日では
巨人ファンのお客さんの入りが違う。
勝てば、上機嫌の巨人ファンで
あっという間に店内が埋まるし、
負ければ、客入りは少ない。

よし! 今日は早めに帰れるぞ。
そそくさと片付けの準備をしていると、
一人のお客さんが来店。
「くそー、負けたぁ!」
「あれ?」
さっきの巨人ファンのおじさんだ。
巨人が勝ったら来るって言ってたのに・・・。

「もう大差だから、諦めて帰ってきちゃったよ」
「あぁ・・・」

f:id:peraichikun:20180828011928j:plain

「とりあえず、ビール!」
それからおじさんの
怒涛のヤケ酒ラッシュが始まる。

「兄ちゃん、なんで勝てないんだろうな~?」
「いやー、そうですね~・・・」
「あと一本が出ねぇんだよな~」
「そうですね~・・・」

おじさんは、酔っぱらいすぎて、
さっきから同じことばかり言っているし。
巨人がなんで勝てないかはいいから、
もう帰ってくれ・・・。

 

連勤開けのオフ!

どや~~~~! やっぱカープ強ぇ~。
東京ドームの巨人-広島戦、3連勝。
店も、当然のごとくめちゃくちゃ忙しかった。

 

で、今日はやっとオフ。
めっちゃ寝た。

 

洗濯するか~(めんどくせぇ~)
さすがに二日連チャンで、
“ももひき”はマズイしな・・・。

 

今日でブログ始めて7日目。
面白いのか何なのかよくわからん
こんな俺のブログに、50人近い人が
「読者」になってくれるという事実。
ビビる。
でも、素直にうれしーっ!

「スター」もつけてくれて
ほんと、ありがとうございます!!

意欲出る~

無いっ!

 

今日、シャワー浴びてパンツを履こうとしたら
パンツが無いっ・・・。



f:id:peraichikun:20180829213539j:plain


洗濯かごを見たら、山盛りの脱いだ服たち・・・。
一人暮らしだと、どうしても
洗濯サボっちゃうんだよな~。
洗濯してくれる彼女もいないし・・・。

さっき脱いだパンツを裏返しにして履こうか
迷ったけど、汗まみれの臭そうなパンツを
履く気にはなれず・・・。

しょうがないから、冬用の白い「ももひき」
(今でもそういうのか?)をじかに履きました。


これがなかなか・・・。


ちょっと長いトランクスみたいで
なかなかいいんですよ。



ハイテンション男 ヒロセ

 

「オハヨーーー!!」
後ろから急にやたらとデカい声がした。
振り返ると、
大学生ほど若くはない20代半ばくらいの男が
満面の笑みで立っている。
髪は坊ちゃん刈りで、よく見ると顔には
所々ニキビの痕が残っている。

f:id:peraichikun:20180827120836j:plain
「俺ヒロセ!!! ヨロシュウ!!」
男は、そう言うと同時に、
ものすごい勢いで右手を差し出してくる。
「あぁ、はじめまして」
痛っ! 
俺の右手を、ヒロセは物凄い力で握りしめてくる。

「ねぇ、いつからなん?」
「え?」
「うん、せやからいつから?」

いきなりタメ口・・・。
いつから?って、
ここに入って何日かってことか・・・。
確か一週間くらい、かな・・・。

「う~んと、いっしゅ・・・」
「あーーー! 今、俺の『せやから』に
 反応したやろ?! 俺、京都やから!
 ヨロシク! はははは!」
「へぇ~そうなんだ~」

・・・こいつ。うざい。
人の話にかぶせてくるし
全然話聞く気ない・・・。

「あれ? ジブンあの人に似てるやん?!」
「え?」
「あの! あのーーー! あのバラエティ出てるやつ!」
「いや~誰だろ」
「あー! なんやっけ! 
 もうそこまで出かけてんねんけど・・・
 分っかんねぇ! あはは!」

なんなんだ、このハイテンション男は・・・。

f:id:peraichikun:20180827120855j:plain

「俺なぁ!役者やってんねん!」

え、おまえも役者か・・・。
俺も数年前までそんなこと言ってたな・・・。

どうやらヒロセは、役者を始めたばかりらしく、
知り合いの劇団で頑張っているらしい。
どーりで、無駄に腹から声出してるわ・・・。

そこへ店長が割って入ってくる。
「ちょっとヒロセくん、この人、一応年上だよ?」
一応って・・・。
「え? そなんやー。まぁええやん」
ヒロセは、店長の肩をポンポン叩いている。
こいつ、店長にもタメ口なのか・・・。

「おれが、この世で一番要らないと思うもん、
 それが敬語! 
 だってそれだけで壁できるやん! なぁ?」
「うん、まぁ・・・」
「だからタメ口! それが俺のスタイル!
 ええやろ?」
「あぁ・・・いいんじゃない」
おいおい、店長も怒んないのかよ。

「そういえば、オノ君も役者やってたんだよね?
 ヒロセ~、事務所とか紹介してもらいなよ~」
「え? いや・・・」
「え! ホンマに?!」

すると、ヒロセは俺に向かって
いきなり直角にお辞儀をしだす。
「オノさん! これは失礼しました!
 宜しくお願い致します!!!」

f:id:peraichikun:20180827120911j:plain

おいおい。お前のスタイルはどうした。
思いっきり敬語になってるし・・・。
しかも、そんなかしこまられても、
俺に紹介できるコネクションなんてあるわけない。
俺なんか、結局どこの事務所にも入らず、
何もかも中途半端で終わったんだから。

「いや、俺にそんなコネクション・・・」
「事務所紹介してください!!
 お願いします!!」
うわー・・・、全然聞いてねぇー。

その後、ヒロセと顔を会わせるたびに、
しつこく頼まれるハメになってしまった。

 

同郷はライバル


バイトに入って数日。
マルオという大学生のおかげで、
自己紹介する時の鉄板ネタ”広島弁”は、
敢えなく空振りしてしまった。

まさか、持ちネタを奪われるとは。
マルオめ・・・!
しかも、こいつは夜間大学生らしく
主に昼のシフトに入る。
ということは、俺の大事なシフトが
削られてしまうということじゃないか!?
フリーターには、死活問題なんだよ。
くぅぅぅ、いまいましいヤツめ!

f:id:peraichikun:20180823232306j:plain

俺は、隣で仕事をしているマルオを
睨みつける。

「オノさん!ワシ、バイトするの
 初めてなんですわ~」
「へぇ~」

マルオは人懐っこい笑顔で話しかけてくるが、
俺はあからさまに素っ気ない返事をする。
同郷だからって優しくすると思うなよ。

「え!? オマエそんなこともできんのん!?」
「すみませんっ!」

俺は、事あるごとにマルオに強く当たる。
へん、俺がどれだけ
アルバイトしてきたと思ってんだ。
飲食店の経験値の差を見せつけてやる!

「オノさん、これ知っとります?」
「あ?」

すると、マルオは、いきなり歌いだす。
「♪おっこのみ焼っきなら徳川へ~~
 友達たっくさんつっくりましょーーー♪」

え? うわ・・・、懐かしい。広島では有名な
お好み焼きの徳川のCM。
久しく聞いていないが、小さい頃から
繰り返し聞いた、この忘れられないフレーズ。
マルオに合わせて俺も思わず声を出す。
「♪東洋観光グル~プ~」

f:id:peraichikun:20180823232313j:plain

うわっ。ハモっちゃったよ。
ってか、今もそのCM変わってないんだ!?
まさか10コも下の子と広島を共有できるとは!

その後も、二人で懐かしの
ローカルCM集で盛り上がる。
「♪一万円の!食事け~ん!
 TSSあじなプレゼントぉ~」

なんだよ~、こいつ・・・ちょっとカワイイな。