ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

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ビギナーズラック

 

「まもなく東京競馬場第7レースの投票を
 締め切ります」

競馬の重賞レース、GⅢの開催日は
馬券場内のアナウンスの声が外まで漏れている。

水道橋と後楽園周辺と言えば、
行き先はだいたい東京ドーム。
ただ、東京ドームのすぐ横に
JRAの場外馬券場があるため、
よく競馬新聞を持ったオッチャンたちが
駅から馬券場めがけて歩いている。


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バイト先に着くと、ここでも大学生たちが
競馬の話で盛り上がっていた。
競馬をすることは、後楽園周辺で
働く者の宿命なのかもしれない。

「オノさ~ん、馬券の買い方教えてくださいよ~」 
競馬をやったことがないという
大学生トミーが言った。
「しょうがねぇな・・・」
トミーは、少し小太りの大学2年生。
俺がこのバイトに入った当初から、
事あるごとに、人懐っこく寄ってきて、
俺もいい兄貴分のような気分になっていた。

正直、競馬なんて
俺もほとんどやったことはないが
高校生の時にゲーセンで競馬ゲームに
ハマっていた時期がある。

俺は当時の記憶を呼び覚ましながら教える。

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「競馬って、ほとんどのレースが
 人気の馬が勝つようになってんだよ」
「へぇ~」
「今回は人気が割れていて、上位人気5頭の
 馬のオッズ、配当金がある程度高い。
 俺の経験上、だいたい人気馬が勝つんだよな」
「ふんふん」
「要するに、上位1~5番人気の馬に
 万遍なく賭ければ、お金が戻ってくるか、
 もしくはそれ以上のバックがあるわけよ」

「じゃあ、俺は、この7番人気の馬にします!」

え? 7番? おいおい、話聞いてたのかよ。
俺は1~5番人気の馬が来るって
説明してたんだけど・・・。

「7番人気って縁起良さそうじゃないすか~」
は? いやいや、この馬はさすがにキツイって。
そういう縁起とかで賭けちゃうヤツが、一番負けるんだよ。

「えっ、ほんとにそれでいいの?」
「いいっす。この馬で!」
まぁ、初めてだし、感覚とかも分かんないんだろうけど・・・。
「最初だし、おまえの好きなようにしなよ。」
「うっす!」
しょうがねぇなぁ。まぁ、トミーの負け分は
俺の勝ち分から補填してやるか・・・。

俺は1番人気から6番人気の馬に、
それぞれ500円ずつの単勝(計3000円)
と手広く賭ける。
よし。人気馬6頭全頭が大コケしない限り、
間違いなくこのレースは当たる。

そして、レースが始まり・・・。

予想に反し、1・2番人気がスタートで
大きく出遅れ、ヒヤッとするが
3番人気が先頭をひた走る。
まずまずの展開・・・。
しかし、最後の直線でトミーの買った
7番人気が外から差しこんで、まさかの1着。

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「ヤッター!!! 当たりました!オノさん!」
「そうだね・・・」
「俺、換金してきまーす!」
「あ、あぁ。換金所は機械に
 馬券を入れれば大丈夫だから・・・」
「うっすー!」

7番人気とあって、トミーの500円は・・・
1万円に化けた。
これぞビギナーズラックか・・・。
っていうか、偉そうに競馬を語ってた
俺の立場っていったい・・・。

すると、換金から戻ってきたトミーが
缶コーヒーを差し出してきた。
「オノさん、あざーす!」
「いや、俺は何も・・・」

10コも下の大学生の前で
いいトコ無しなばかりか、
缶コーヒーまでご馳走になるとは・・・。

 

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トホホ・・・。