なぜか大家さんと・・・
よっし、よっし。
今日は久々にバイト早上がり。
ここんとこ、東京ドームは嵐のライブで
忙しかったから・・・。
今日は帰って何しようか。
そろそろ溜まった洗濯物も洗わんとな。
また履くパンツが無くなってしまう・・・
「オノくん?? 201号室の」
突然の後ろからの声に振り向くと、
アパートの大家さんが立っている。
丸々とした柴犬も一緒だ。大家さんの後ろに隠れて
こっちを見ている。
「あ、こんにちは~」
大家さんは、70歳くらいのお爺さんで、
どうやら独り身らしい。
俺が住んでいるアパートは、
大家さんの自宅の
敷地の中に、建てられているので、
家の裏には大家さんが住んでいる。
休みの日には、たまに
家の近くで見かけるが、
こう言ってはなんだが、見た感じ、
ちょっと頑固ジジイっぽいので、
軽く会釈だけして済ましている。
でも、あっちから話しかけてくるなんて
珍しいな・・・
「ちょっといい?」
「え?はい」
「あのね、先月の家賃、
まだ振り込まれてないんだよ」
「え?」
あ・・・そうだった!
今、銀行に預金が無かったんだっ!
うわっ。やべー!
ちょっと怒ってるぽいし。
「すみませんっ!すぐ振り込みますっ!」
俺はお辞儀をして、
急いで家に逃げ込もうとする。
すると、また後ろから
大家さんに呼び止められる。
「あ!ちょっと待って!」
振り返ると、大家さんが
神妙な顔をしている。
なな何だろう・・・
やっぱり怒ってるのかな・・・
まさか、家を
追い出されたりするんじゃないだろうか!
「あ!今、お金取りに行きますんで!
すみませんっ!」
「いや、まぁ家賃の事は
そんなに急がなくてもいいよ」
「へ?・・・あ、そうですか・・・」
あれ?怒ってない?
「オノ君・・・
君、よく家で歌ってるよね?」
「え?」
うわ~~~・・・
聞こえてたのか・・・
そんな大きな声で
歌ってたつもりじゃないのに。
まさか、隣人から苦情が来たとか?!
やばい!それが原因で
やっぱり家を追い出されるのか?!
「あ、あ、すみません。気を付けます・・・」
「いや、いいんだよ。
実は・・・
歌を教えてもらいたくてね」
「はい???」
大家さんは、急に
モジモジしながら話し始める。
「実は、毎週、老人会で
カラオケに行くんだけどね。
どうもうまく歌えないんだよ。
教えてくれないかなぁ?」
「え?え?いや、まぁ、いいですけど・・・」
「よしっ!じゃぁカラオケに行こう!」
「え?!!!今からですか?!」
「そうだよ。じゃないと
練習できないでしょ。
もちろん、カラオケ代は出すから」
「え・・・あ、ありがとうございます」
「夕飯は食べた?」
「いや、まだです・・・」
「じゃぁ、そこのガストで
食べてから行こう!」
「あ・・・」
かくして、なぜか俺は、
大家さんにガストで
ミックスグリルをご馳走になり、
カラオケに向かったのだった・・・。